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結論:議事録は副業法人でも必須
副業法人の運営において、以下の意思決定は議事録の作成・保管が会社法上必須です。
- 役員報酬の決定・改定(毎期)
- 役員社宅の契約(利益相反取引)
- 役員貸付金・借入金(利益相反取引)
- 定款変更(決算月変更等)
- 事業目的の追加
「一人会社だから議事録なんていらないでしょ?」と考える方もいますが、形式的にでも作っておかないと、税務調査での指摘・利益相反取引の効力否定などのリスクが顕在化します。
議事録の必須記載項目、3シーン別の雛形(役員報酬/役員社宅/役員貸付金)、保管方法と運用、税務調査で否認されないポイントまで実体験ベースで整理しています。
議事録に必要な6つの記載項目
議事録の最低限の必須記載項目は以下の6つ。これが揃っていれば形式的には会社法の要件を満たします。
- ① 開催日時・場所:「2026年5月9日 14:00 当社本店会議室にて」など
- ② 出席者:「代表社員 ○○(一人会社の場合は本人のみ)」
- ③ 議題:「役員報酬の改定の件」「役員社宅契約の承認の件」など
- ④ 議事の経過:「議長より下記内容の提案があり、審議の結果」など定型表現でOK
- ⑤ 決議内容:「賛成多数(または全会一致)により可決」
- ⑥ 議長・出席者の記名押印:代表社員の押印(実印推奨)
一人会社では実質的な「会議」は行われませんが、形式的に「議事録の体裁」を整えることが重要。1ページの簡単な書類でも、税務調査時に「正規手続きを踏んだ証拠」になります。
雛形①:役員報酬改定の議事録
毎期の決算後、新事業年度の役員報酬を決定する際に作成します。期首から3か月以内が改定の期限。
社員総会議事録(役員報酬改定)
議長は、第○期事業年度(○年○月○日〜○年○月○日)における代表社員の報酬を以下のとおり改定したい旨を提案し、その理由を説明した。
- 改定対象:代表社員 ○○
- 改定後の月額報酬:○○○,○○○円
- 支給開始月:○年○月分より
- 支給日:毎月○日
議長は、本議案について議決権を有する社員の同意を求めたところ、全員異議なくこれを承認可決した。
以上、本社員総会の議事の経過および結果を明確にするため、本議事録を作成し、議長がこれに記名押印する。
2026年○月○日
○○合同会社 代表社員 ○○ 印
雛形②:役員社宅契約の議事録(利益相反対応)
役員社宅は法人と役員(自分)の賃貸借契約。会社法上の利益相反取引(自己取引)に該当するため、社員総会の承認が必須です。
社員総会議事録(役員社宅契約・利益相反取引承認)
議長は、当社が代表社員 ○○ から下記の物件を社宅として賃借する取引(会社法第595条第1項に定める利益相反取引)について、その内容を説明し、承認を求めた。
【契約内容】
- 物件:○○県○○市○○町○丁目○番○号 ○○マンション ○号室
- 賃借人:○○合同会社
- 賃貸人:代表社員 ○○ または 当該物件の所有者(必要に応じて差し替え)
- 賃料:月額 ○○○,○○○円
- 役員からの徴収額(賃貸料相当額):月額 ○○,○○○円
- 契約期間:2026年○月○日 から 2028年○月○日 まで
賃貸料相当額は、所得税基本通達36-40〜36-42の規定に基づき算定したものであり、税務上適正な水準である。
議長は、本議案について議決権を有する社員の同意を求めたところ、全員異議なくこれを承認可決した。
以上、本社員総会の議事の経過および結果を明確にするため、本議事録を作成し、議長がこれに記名押印する。
2026年○月○日
○○合同会社 代表社員 ○○ 印
雛形③:役員貸付金・借入金の議事録
会社が役員にお金を貸す(または役員が会社にお金を貸す)場合も、利益相反取引として議事録の作成が必須です。
社員総会議事録(役員貸付金・借入金の承認)
議長は、当社と代表社員 ○○ との間で下記内容の金銭貸付(または借入)取引を行うことについて、会社法第595条第1項に定める利益相反取引として承認を求めた。
【取引内容】
- 取引種別:役員貸付金(または役員借入金)
- 金額:○○○,○○○円
- 利率:年 ○.○%(特例基準割合に準拠)
- 返済期限:2027年○月○日
- 返済方法:毎月の役員報酬から○○,○○○円ずつ天引き(または一括弁済)
- 利息計算:年1回(事業年度末)
本利率は、税務上の認定利息相当のレートであり、無利息での貸付による役員給与認定リスクを回避するために設定するものである。
議長は、本議案について議決権を有する社員の同意を求めたところ、全員異議なくこれを承認可決した。
以上、本社員総会の議事の経過および結果を明確にするため、本議事録を作成し、議長がこれに記名押印する。
2026年○月○日
○○合同会社 代表社員 ○○ 印
私は副業法人成り当初、「議事録なんて一人会社で意味あるの?」と懐疑的でした。が、税理士から「利益相反取引の議事録がないと、社宅契約も役員報酬もすべての効力が否定される可能性がある」と言われ、慌てて Word で雛形を作りました。
結果として、毎期の決算前に「役員報酬議事録」「役員社宅議事録」を1ページずつ作る習慣が定着。3期分の議事録を Notion に保管しているだけで、税務調査時の安心感が桁違いです。最初に雛形を作っておけば、毎回のメンテは10分程度で済みます。
議事録の保管方法と運用
保管期間
会社法上、議事録の本店保管期間は10年間が原則です。
保管方法
- 紙保管:印刷+押印した原本をファイリング
- 電子保管:PDF化してクラウド保管(Google Drive・Dropbox等)。電子帳簿保存法対応の意識を持つ
- ハイブリッド:原本は紙、コピーをPDF化してクラウドに保管。最も実務的
命名規則の例
20260509_役員報酬改定議事録.pdf20260601_役員社宅契約議事録.pdf20260801_役員貸付金議事録.pdf
日付+議題でファイル名を整えておくと、税務調査時に検索が一発でできます。
よくある質問(FAQ)
Q. 副業法人で議事録は本当に必要ですか?
A. 必要です。役員報酬の改定・役員社宅の契約・役員貸付金などの重要な意思決定は、合同会社では社員総会、株式会社では株主総会の決議が必要で、議事録の作成と保管が会社法上義務付けられています。一人会社・一人社員でも形式的な議事録の作成は必須。議事録不備は税務調査での否認根拠になります。
Q. 議事録を作成しないとどうなりますか?
A. 主に3つのリスクがあります。①役員報酬を改定したのに議事録がないと、税務調査で「正規の手続きを経ていない」として損金算入が否認される。②役員社宅・役員貸付金などの利益相反取引で議事録がないと、契約自体の効力が否定される可能性。③税務調査全体で印象悪化し、他の論点も厳しく見られる。
Q. 合同会社と株式会社の議事録の違いは?
A. 合同会社の議事録は「社員総会議事録」、株式会社は「株主総会議事録」と呼びます。本質的な構成は似ていますが、合同会社は社員(出資者)総会の決議、株式会社は株主総会+取締役会(設置会社の場合)の決議が必要。記載項目はほぼ共通で、開催日・場所・出席者・議題・決議内容・署名押印の6点が最低限。
Q. 議事録の保管期間と方法は?
A. 議事録の保管期間は会社法上、本店に10年間が原則です。電子保存も認められており、PDF化してクラウドに保管するのが現実的。電子帳簿保存法の対応も同時に意識して、ファイル名に「20260509_役員報酬改定議事録.pdf」のような命名規則で日付・議題が分かる形にすると、税務調査時の検索もスムーズです。
Q. 一人会社でも議事録の押印は必要ですか?
A. 代表社員の押印は必須です。一人会社で「自分で議事を行い、自分で議決」という形になりますが、形式的に代表社員の記名押印(または電子署名)が必要です。実印・認印どちらでも可ですが、議事録の真正性を担保するため、会社実印での押印が最も安全。
📝 この記事のまとめ
議事録は形式が命です。最初に税理士のレビューを受けると安心感が違います
「本記事の雛形を自社用にカスタマイズしたい」「過去の議事録の不備をチェックしてほしい」など、個別判断は税理士相談が確実です。副業法人主向けの無料相談を活用してみてください。
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