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結論:サービス業の副業法人なら簡易課税が有利になりやすい
結論を先に。YouTube・ブログ・コンサル・IT・Webサービスなど仕入が少ないサービス業の副業法人なら、簡易課税が有利になりやすいです。みなし仕入率50%が適用され、実際の仕入率が30〜40%程度なら原則課税より納税額が下がります。
ただし、外注費・広告費が多い業種、設備投資が大きい年は原則課税のほうが有利になることもあります。2年継続適用の要件があるため、計画的な選択が必要です。
簡易課税の基本、業種別みなし仕入率、原則課税との損得シミュレーション、選択届の期限、2年継続適用の落とし穴、副業法人での判断軸まで実体験ベースで整理しています。
簡易課税の基本と「みなし仕入率」
簡易課税とは
消費税の納税額計算方法のひとつで、「実際の仕入を計算するのが大変だから、業種ごとに決まった率(みなし仕入率)で簡便計算していい」という制度です。基準期間(2期前)の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択可能。
計算式
📊 簡易課税の納税額計算
例:年間売上1,100万円(消費税100万円)のサービス業(第5種・みなし仕入率50%)の場合:
- 納税額 = 100万円 ×(1 − 50%)= 50万円
これだけで計算終了。実際の仕入額は一切関係ありません。
原則課税との違い
原則課税では「売上消費税 − 仕入消費税」で計算し、実際の仕入実額に基づきます。仕入の証憑(インボイス含む)の整理が必要で、計算が複雑。一方、簡易課税は売上だけで計算が完結する超シンプルな仕組みです。
業種別 みなし仕入率早見表
| 事業区分 | みなし仕入率 | 該当業種の例 |
|---|---|---|
| 第1種(卸売業) | 90% | 他の事業者への販売 |
| 第2種(小売業) | 80% | 消費者向け販売、EC物販 |
| 第3種(製造業等) | 70% | 製造業、建設業、農業 |
| 第4種(その他) | 60% | 飲食店、金融業、運輸業 |
| 第5種(サービス業) | 50% | YouTube、ブログ、コンサル、IT、デザイン、士業 |
| 第6種(不動産業) | 40% | 不動産賃貸、不動産仲介 |
副業法人で多い業種
副業サラリーマンの法人成りで多い業種は、ほとんどが第5種(サービス業・みなし仕入率50%)に該当します。YouTube・ブログ・コンサル・IT受託など、いずれもサービス業区分です。
1法人で複数の事業を営む場合、各事業ごとの売上に応じて加重平均でみなし仕入率を計算します。例:YouTube収入(第5種)+EC物販(第2種)の構成なら、それぞれの売上比率で按分計算が必要。会計ソフトで売上区分を整理しておくと、簡易課税の計算がスムーズです。
原則課税 vs 簡易課税の損得シミュレーション
ケース:年間売上1,100万円・サービス業
📊 原則課税の場合(実際の仕入率30%)
📊 簡易課税の場合(みなし仕入率50%)
このケースでは、簡易課税のほうが20万円有利。実際の仕入率がみなし仕入率より低い場合、簡易課税が得をします。
逆転ケース:実際の仕入率が高い場合
📊 実際の仕入率60%の場合(外注費が多いケース)
外注費・広告費が多い場合、実際の仕入率がみなし仕入率を超え、原則課税のほうが有利になります。
損得分岐の早見表(サービス業・みなし仕入率50%)
| 実際の仕入率 | 有利な方式 | 差額(年売上1,100万円ベース) |
|---|---|---|
| 20% | 簡易課税 | +30万円 |
| 30% | 簡易課税 | +20万円 |
| 40% | 簡易課税 | +10万円 |
| 50% | 同等 | ±0円 |
| 60% | 原則課税 | +10万円 |
| 70% | 原則課税 | +20万円 |
実際の仕入率がみなし仕入率(サービス業なら50%)より低ければ簡易課税、高ければ原則課税が有利、というシンプルな判断軸です。
私は副業法人成り後、消費税は原則として2年免税の権利を取りに行ったため、簡易課税の検討は3期目(課税事業者になるタイミング)で本格化しました。
業種はサービス業(第5種・みなし仕入率50%)で、実際の仕入率は20〜25%程度。試算したら簡易課税のほうが年間20万円以上有利という結果が出たので、選択届を提出して簡易課税に切り替えました。最初の試算時は「みなし仕入率って何?」状態でしたが、税理士に1時間レクチャーしてもらってシンプルな仕組みだと理解できました。
選択届の期限と手続き
提出書類
「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署に提出します。e-Taxで電子提出可。
提出期限
適用したい事業年度の前事業年度末までに提出が必要。
- 例:9月決算法人で第3期(2026年10月〜2027年9月)から簡易課税にしたい場合 → 第2期の2026年9月末までに届出
- 例:3月決算法人で第3期から適用 → 第2期の3月末までに届出
設立第1期から適用したい場合
「第1期の事業年度終了日まで」に届出を出せば、第1期から簡易課税が適用されます。これは特例で、新設法人の優遇措置。
届出期限は厳格です。1日でも遅れると、その期は原則課税のまま。次の期からの適用になります。決算月が近づいたら、簡易課税適用予定の有無を税理士と必ず確認しておきましょう。
簡易課税の注意点(2年継続・設備投資の罠)
注意点1:2年継続適用が必須
簡易課税を選択すると、2年間は原則課税に戻れません。「来年から原則課税にしたい」と思っても、2年経過まで切替不可です。途中で「不利だった」と気づいても変更できないため、選択は2期分の見通しを立てて判断する必要があります。
注意点2:設備投資が大きい年に不利
大型機材購入・オフィス内装・ソフトウェア投資など、仕入消費税が大きく出る年は、原則課税のほうが圧倒的に有利になることがあります。「来年カメラ機材を200万円分買う予定」みたいなケースでは、その年は原則課税が望ましく、簡易課税を選んでいると還付を受けられません。
注意点3:仕入税額控除の還付がない
仕入が売上を上回った年(赤字+仕入超過)でも、原則課税なら還付がありますが、簡易課税ではゼロです。スタートアップ期で仕入が大きい場合、原則課税の選択がメリット大。
注意点4:インボイス制度の2割特例との比較
インボイス登録した課税事業者向けの「2割特例」(売上消費税の20%を納税する経過措置・2026年9月まで)があります。サービス業のみなし仕入率50%(=納税50%)と比較すると、2割特例(=納税20%)のほうが有利になることが多いです。事業年度ごとに有利な方式を選べる柔軟な設計なので、毎年試算するのがおすすめ。
2年継続適用+設備投資への影響+2割特例との比較など、判断軸が複雑です。「サービス業だから簡易課税で」と短絡的に決めず、過去2〜3期の仕入実績と将来の事業計画を税理士に試算してもらってから判断するのが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. 副業法人で簡易課税を選ぶべきですか?
A. サービス業(YouTube・ブログ・コンサル・IT等)で仕入が少ない業種なら簡易課税が有利になりやすいです。みなし仕入率50%が適用され、実際の仕入が売上の30〜40%程度なら原則課税より納税額が下がります。一方、外注費や広告費など仕入が多い業種、設備投資が大きい年は原則課税のほうが有利。判断には2〜3期分の利益・仕入実績の試算が必要です。
Q. 簡易課税のみなし仕入率とは?
A. 事業区分ごとに法律で定められた「仕入とみなす割合」のこと。例:第5種(サービス業)は50%、第3種(製造業)は70%、第2種(小売業)は80%。実際の仕入額にかかわらず、この率を使って納税額を計算します。例えば年間売上1,100万円(消費税100万円)のサービス業なら、簡易課税では「100万円×(1-50%)=50万円」が納税額。
Q. 簡易課税を選ぶための条件と期限は?
A. 条件は2つ:①基準期間(2期前)の課税売上高が5,000万円以下、②「消費税簡易課税制度選択届出書」を適用したい事業年度の前事業年度末までに税務署に提出。設立第1期から適用したい場合は、第1期の事業年度終了日までに届出可能(特例)。一度選択すると2年間継続適用が必要なため、計画的な意思決定が重要です。
Q. 簡易課税のデメリットは?
A. 主に3つ。①2年継続適用が必要で、設備投資が大きい年も切替不可、②実際の仕入が多い業種では原則課税より不利、③仕入税額控除の還付を受けられない。中でも①は副業法人で意外と影響大。「来年機材投資する予定」がある場合、その年は原則課税のほうが有利になることがあります。
Q. インボイス登録した場合の簡易課税はどうなりますか?
A. インボイス登録して課税事業者になった場合も、簡易課税の選択は可能です。基準期間の課税売上高5,000万円以下の要件を満たし、選択届出書を期限内に提出すれば適用されます。さらに「2割特例」というインボイス制度に伴う経過措置もあり、適用初期は売上の2割を納税する簡便計算が使えます(2026年9月までの期間限定)。簡易課税と2割特例は事業年度ごとに有利な方を選べる柔軟な仕組み。
📝 この記事のまとめ
簡易課税の選択は2年単位の意思決定。試算なしで決めるのは危険です
「簡易課税が自社で得か損か」「2割特例とどちらが有利か」「設備投資のタイミングをどう考えるか」など、個別判断は税理士相談が確実です。副業法人主向けの無料相談を活用してみてください。
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