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結論:副業法人なら「9月決算」が無難
先に結論からお伝えします。副業サラリーマンが法人成りする場合、決算月は9月(9月末締め)が無難な選択肢になりやすいです。理由は、本業の年末調整(12月)・確定申告(2〜3月)と、法人決算の繁忙期(決算月から2か月以内)を物理的にずらせるためです。
もちろん「絶対に9月にすべき」という話ではありません。業種・売上の季節変動・設立月によっては、別の月のほうが理にかなうケースもあります。ただ「迷ったら9月」という指針は、副業法人運用の世界ではかなり一般的になっています。
決算月によって何が変わるのか、9月決算が選ばれる理由、業種別の最適月、設立後にあとから決算月を変更する手順までを、副業法人を実際に運営している立場から整理しています。
そもそも決算月とは?決め方の自由度
「決算月」とは、その法人の事業年度(1年間)の最後の月のことです。決算月の翌月から2か月以内に、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・消費税の申告と納付を行うのが基本ルールになります。
個人事業主は1月〜12月で固定(暦年課税)ですが、法人の場合は定款に記載すれば任意の月を決算月にできるのが大きな違いです。3月決算や12月決算が「なんとなく多い」イメージがありますが、これは大企業や上場企業の慣習で、副業の小さな法人がそれに合わせる必要はまったくありません。
決算月の自由度
- 1月〜12月のどの月でも選べる(毎月末日が締め日になる)
- 設立時に定款で定める(あとから変更も可能、後述)
- 初年度のみ、設立日から決算月までの期間が1〜12か月の幅を取りうる
例えば10月15日に設立して決算月を9月末にした場合、初年度は「10月15日〜翌9月30日」の約11か月半が事業年度になります。設立日と決算月は別概念なので混同しないようにしましょう。
決算月選びの5つの判断軸
決算月を「なんとなく」決めると、後から「失敗したな…」と感じる場面が出てきます。私は以下の5つの観点で総合的に判断するのがいいと思っています。
本業の繁忙期と被らないか
サラリーマンとしての年末調整(12月)、本業の決算期(一般的に3月)、確定申告(2〜3月)と決算作業(決算月から2か月)が重なると、副業のための時間が取れなくなります。本業の繁忙期から2〜3か月離した決算月にするのが基本です。
売上の季節変動と納税資金の準備
業種により、売上が集中する月と落ち込む月があります。決算後2か月以内に納税が必要なため、納税資金が準備しやすい月(売上が見えてから2〜3か月後)を決算月にすると資金繰りが楽になります。
消費税の免税期間を最大化できるか
資本金1,000万円未満で設立した場合、原則として最大2事業年度(最長で約2年間)が消費税の免税期間になります。設立月の前月を決算月にすると初年度をフルで使えるため、免税期間が最も長くなります。
節税対策(決算賞与・小規模企業共済等)を打つ時間があるか
決算前に「想定より利益が出そう」と分かったら、決算賞与・経費前倒し・小規模企業共済の前納などで節税対策を打ちます。繁忙期の直後を決算月にすると、利益確定→対策→決算の時間が極端に短くなります。
税理士費用と繁忙期
3月決算・12月決算の法人を多く抱える税理士事務所は、5月と2月が繁忙期になります。同じ作業でも繁忙期の依頼は割高になることがあるため、繁忙期を外せる決算月(4・7・8・9・10月決算など)は、税理士との費用交渉や対応の手厚さで有利になりやすい傾向があります。
私は当初、「12月決算なら個人と同じだから分かりやすい」と思って12月決算で設立しようとしていました。が、税理士との初回相談で「副業の方の12月決算は、本業の年末調整+自分の確定申告+法人決算が全部1〜3月に集中するので地獄ですよ」と言われ、即座に9月決算に切り替えました。
今振り返ると、あの一言で決算月を変えていなかったら、確定申告シーズンに毎年泣いていた自信があります。
9月決算が選ばれる3つの理由
理由1:本業の繁忙期と完全にずらせる
9月決算の場合、法人税申告期限は11月末になります。これは本業の年末調整(12月)の直前に終わる絶妙なタイミングです。年末調整・冬休み・確定申告の三大繁忙期がすべて終わってから、副業法人の業務は「次の決算月までほぼ通常運転」のサイクルに入れます。
理由2:税理士の閑散期で対応が手厚い
税理士業界の繁忙期は5月(3月決算法人)と2月(個人確定申告)。9月決算の申告期限である11月末はちょうど閑散期にあたるため、決算前後のレビューや節税相談がじっくり受けられる傾向があります。私自身、税理士との節税ミーティングを9月初旬に組んでもらっており、相談の質が高いと感じています。
理由3:節税対策の意思決定に余裕がある
多くの副業法人は、夏(7〜8月)にかけて売上が見え始め、9月初旬に「年間の利益見込み」が立ちやすい構造になっています。9月決算なら、利益見込みを把握してから決算賞与・経費前倒し・小規模企業共済の前納などを判断する時間が十分に取れます。
・10月:新年度スタート
・1〜3月:本業の確定申告(法人業務は通常運転)
・7〜8月:年間利益の見通しを立てる
・9月:節税対策の最終調整 → 決算
・10〜11月:決算書類作成 → 11月末申告
業種別おすすめ決算月
「9月決算が無難」という大原則の上で、業種・売上構造によっては別の月のほうがフィットすることがあります。代表的なケースを整理します。
YouTuber・ブロガー・SaaS等
売上の季節変動が小さく、本業との両立を最優先したい層。デフォルトの選択肢としてバランスがいい。
EC・物販系
11〜12月の年末商戦の前を期末にすることで、繁忙期の利益見通しを立てた上で在庫戦略を組める。
夏イベント・季節商品
夏休み商戦・夏フェス系の売上が読みやすい時期に決算。秋以降に余裕を持って決算作業に入れる。
確定申告サポート系・税務関連
2〜3月の繁忙期売上を取り込んだ後に決算。閑散期に決算作業ができる。
不動産・家賃収入系
固定資産税の通知(4〜6月)後を決算月にすることで、翌期の固定費見通しが立てやすい。
研修・コンサル業
4〜6月の新年度需要が落ち着いてから決算。秋以降の閑散期に余裕を持って次年度計画を立てられる。
本業の繁忙期と被る12月決算・3月決算は、副業サラリーマンには負担が大きい組み合わせになりがちです。会計ソフトを使いこなしていて、税理士に丸投げできる体制があれば回せますが、自力対応の比率が高い人は避けたほうが無難です。
決算月変更の手順(あとから変更も可能)
「設立時に12月決算で作ってしまったけど、やっぱり9月にしたい」というケースは珍しくありません。決算月はあとから変更可能なので、過度に最初の判断にこだわる必要はありません。
変更の3ステップ
定款変更の決議
合同会社なら社員総会、株式会社なら株主総会の特別決議で定款を変更します。一人会社の場合も、形式的に決議書(社員総会議事録または株主総会議事録)を作成します。法務局への登記は不要(事業年度は登記事項ではないため)です。
異動届出書の提出
税務署・都道府県税事務所・市町村役所の3か所に「異動届出書」を提出します。それぞれ「事業年度を変更した」旨と新しい決算月を記載。郵送可能で、e-Taxやエルタックスでも対応可。
変更後の最初の事業年度の決算
変更すると、変更した期は1〜11か月の短期決算になります。例えば12月決算を9月決算に変更し、4月に決議すると「1月〜9月」の9か月決算になります。決算作業は実質2回発生するので、変更を計画する月を選ぶ余裕を持つと楽です。
定款変更・異動届の代行を税理士・司法書士に頼む場合、1〜3万円程度が相場です。自分でやれば実費(郵送代)だけで済みますが、初回は税理士の確認を入れるのが安全です。
決算月で失敗しないためのチェックリスト
設立前・変更前に、以下の観点を自分のケースに当てはめて確認してください。
| 観点 | チェック内容 | NG なら |
|---|---|---|
| 本業の繁忙期 | 本業の繁忙期から決算月+2か月(申告期限)が外れているか | 決算月をずらす |
| 確定申告期 | 個人の確定申告期(2〜3月)と決算作業が被らないか | 決算月をずらす |
| 消費税免税 | 設立月の前月を決算月にして免税期間を最長化できるか | 初年度の長さを再検討 |
| 売上の見通し | 決算前2〜3か月で年間利益の見通しが立てられるか | 節税策の打ち手が減る |
| 納税資金 | 決算月+2か月時点で納税資金を確保できる売上サイクルか | 資金繰りが厳しくなる |
| 税理士の繁忙期 | 税理士の繁忙期(5月・2月)を避けた決算月か | 費用と対応の手厚さに影響 |
本業も12月・3月決算で、年末調整も自分で対応する必要があり、確定申告も自分で行う場合、決算作業が完全に重なります。会計事務所に丸投げできるなら問題ないですが、自力対応の比率が高い副業法人主には負担が大きい選択になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 副業法人の決算月はあとから変更できますか?
A. できます。定款変更(社員総会の決議)と税務署・都道府県・市町村への異動届出書の提出が必要です。司法書士や税理士に依頼する場合は数万円の費用がかかりますが、自力でも対応可能です。ただし変更した期は1か月〜11か月の短期決算となるため、決算作業が事実上2回発生する点に注意してください。
Q. なぜ副業法人で9月決算が多いと言われるのですか?
A. 本業の年末調整・確定申告の繁忙期(1〜3月)と、法人決算の繁忙期(決算月から2か月以内)をずらせるためです。9月決算なら法人税申告期限が11月末で、本業の年末年始や3月の確定申告と作業が被りません。税理士費用も繁忙期を外せるためやや交渉しやすいケースがあります。
Q. 消費税の2年免税を最大化するために決算月は何月がいいですか?
A. 設立月の前月を決算月にすると初年度をフルで12か月使えるため、免税期間が最長になります。例えば10月設立なら9月決算が初年度11か月+2期目12か月=合計23か月。10月設立で12月決算にすると初年度3か月+2期目12か月=合計15か月になり、約8か月分免税期間が短くなります。
Q. 業種別におすすめの決算月はありますか?
A. 売上に季節変動がある業種は、繁忙期の直前を決算月に設定するのが王道です。年末商戦の物販なら11月決算、夏イベント主体なら6月決算、確定申告サポート業務なら4月決算など、繁忙期の見通しが立った状態で決算戦略を組めるためです。
Q. 決算月によって税金の総額は変わりますか?
A. 原則として変わりません。年間を通じての所得は同じなので、法人税・住民税・事業税の総額には決算月そのものでの差は出ません。ただし、決算前の節税対策(決算賞与・経費前倒し・小規模企業共済の前納など)の意思決定に使える時間と、納税資金の準備期間が変わるため、間接的に納税負担の感じ方は変わります。
📝 この記事のまとめ
決算月の最適化は、初年度の節税効果に直結します
「9月決算がいいと聞いたけど、自分の業種に合うか不安」「すでに他の決算月で設立してしまったけど変更すべきか」など、個別事情の判断は税理士相談が確実です。副業法人に強い税理士の無料相談を活用してみてください。
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